SKAdNetworkの特徴・課題やトラッキングをおこなう仕組みを解説
Ads Universityブログ編集部
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Cookieの取得制限が注目されている広告市場ですが、アプリ領域に関しては先んじてプライバシー保護への取り組みが進んでいます。その中でも重要な技術の一つが、Appleが導入したプライバシー保護を強化しつつ広告の効果を測定するための重要なフレームワーク「SKAdNetwork(SKAN)」です。
広告主やマーケティング担当者はSKANを活用することで、IDFAの許諾有無に依存せずとも広告キャンペーンのパフォーマンスを正確に評価できます。
本記事では、SKANの特徴・課題や注目されるようになった背景のほか、SKANでトラッキングをおこなう仕組みについて解説します。
目次を表示
- SKAdNetworkとは
- SKAdNetworkの特徴
2.1 アプリ専用の広告計測フレームワーク
2.2 SDKとのちがい - KAdNetworkが注目されるようになった背景
3.1 IDFAならびにCookie規制の強化
3.2 ATTの導入 - SKAdNetworkでトラッキングをおこなう仕組み
4.1 ユーザーが広告をクリック
4.2 24時間のタイマーがスタート
4.3 ポストバックが送信される - SKAdNetworkの課題
5.1 データ受信の遅延
5.2 リエンゲージメントの計測ができない - SKAdNetworkの導入を支援するプラットフォーム「jampp」
- まとめ
「SKAdNetwork(SKAN)」とは、2018年にAppleが導入した正確さとプライバシーを両立する広告計測フレームワークです。
Appleがユーザーの端末にランダムに割り当てる広告ID「IDFA」を使用せず、アプリのインストールやコンバージョンなどの計測が可能です。
本章では、SKANの特徴についてソフトウェア開発キットSDK(Software Development Kit)との違いを含め解説します。
2.1 アプリ専用の広告計測フレームワーク
SKANはプライバシーを保護しながら広告の成果を測定できるiOSアプリ用の計測機能として提供が開始されました。
当初はアプリ専用の広告計測フレームワークのためWebサイトの広告については計測できないというデメリットがありましたが、その後、iOS 16.1とiPadOS 16.1向けにSKAdNetwork 4.0がリリースされて、Web広告からアプリへのアトリビューションにも対応しています。
具体的には、App Storeの製品ページに誘導するWeb掲載面でのコンバージョン測定が可能です。ただし、Webサイトからアプリへのアトリビューションは、Safariでしか利用できません。
2.2 SDKとのちがい
アプリ広告の効果計測として主要なものにSDKがあります。
SDKとは、ソフトウェアを開発する際に必要な開発キット「Software Development Kit」の総称です。
ここではアプリの広告計測に利用されるSDKを指して、SKAdNetworkとのちがいを3つに分けて解説します。
①計測主体
SDKを提供しているサービスはいくつかありますが、国内では「AppsFlyer」「adjust」の二社が主流になっています。
これらのSDKが広告の表示、クリック、インストールを計測し、データを各広告ネットワークのサーバーに送信しています。
一方、SKAdNetworkはAppleが提供するフレームワークで、計測の主体はAppleです。
広告のクリックからインストール、コンバージョンイベントまでを匿名でトラッキングし、Appleがまとめてレポートします。
②IDFAの利用
SDKはIDFAを使用して広告効果をトラッキングします。
IDFAが利用できない場合は、「確率論的マッチング」という方法で、IPアドレスやデバイスタイプ・OSなどを掛け合わせ、類推的に広告効果を計測します。
一方、SKAdNetworkはIDFAを利用せず、ユーザーのプライバシーを保護しながら匿名化されたデータで広告効果を測定します。
③プライバシー保護
SDKは、IDFAを使ってユーザーを特定し詳細な行動をトラッキングするため、プライバシーリスクが高くなっていました。IDFAの取得制限によりプライバシー保護は強化されましたが、反面、計測精度が低下する懸念があります。
一方、SKAdNetworkはプライバシー保護を重視し、個別の識別子を使わずに匿名化されたデータで広告効果を測定します。データをAppleが管理するため、プライバシーが高度に保護されますが、詳細まで分析することが難しいというデメリットがあります。
続いて、SKANが注目されるようになった背景について、世界的なプライバシー保護意識の高まりとそれに対応するApple社の自主規制の両者の観点から解説します。
3.1 IDFAならびにCookie規制の強化
IDFA(Identifier for Advertiser)とは、Appleがユーザーの端末ごとに付与しているIDで、端末を識別することができます。
広告主はIDFAに紐づいた利用履歴などの情報を取得して、ターゲティング広告に活用することが可能です。この特徴は、Webサイト内の広告などの第三者ドメインが発行する3rd Party Cookieと類似しています。
従来、広告主はアプリ上では IDFA、 WebサイトではCookieを利用してトラッキングをおこなってきました。
しかしながら、アプリやデバイスなどを横断して取得・照合した情報によって高い精度で個人を特定できる点が問題視されるようになっています。
こうした世界的なプライバシー保護意識の高まりの結果、国内外で IDFAやCookieに関する法規制が強化されるようになりました。
IDFAについて詳しくはこちら
3.2 ATTの導入
上述の流れに対応する形で、AppleはATTというプライバシーフレームワークを導入しています。
ATT(App Tracking Transparency)とは、iOS14.5のアップデートに合わせてリリースされたAppleのユーザープライバシー機能です。
この機能により、アプリがiOSデバイスの広告識別子(IDFA)にアクセスしてユーザーまたはデバイスを計測する際に、ユーザーの許諾が必要になりました。
従来、ユーザーが自ら提供を拒否しない限り、アプリ事業者が自由にIDFAを取得できる仕組みでした。
しかしながら、iOS14.5よりすべてのApple製品上でIDFAの利用にあたり、ユーザーの同意取得を義務付けられています。
IDFAの取得を許可しないユーザーが一定割合でいるため、IDFAを取得できる端末数が減少しています。
その結果、IDFAによる広告配信と広告効果計測が従来のように機能しなくなる恐れが生じています。
こうした流れを受けて、IDFAが取得できなくてもトラッキングをおこなえるSKANが注目を集めるようになりました。
SKANの特徴や注目される背景を理解したところで、トラッキングをおこなう具体的な仕組みについて順を追って説明します。
4.1 ユーザーが広告をクリック
ユーザーのデバイスに広告が表示されると同時にアプリで3秒間のタイマーがスタートして、SKANにその旨が通知されます。
3秒以上広告が表示されると、アプリからSKANにタイマー終了の通知が届き、このアクティビティは表示成功として記録されます。
その後ユーザーが広告をクリックすると、アプリストアに誘導されてアプリをインストールするという流れです。
なお、IDFAアトリビューションにはタイマー機能はありません。ユーザーが広告をクリックした時点で、収益化されたアプリに関連するIDFAデータがMMPに記録されます。
MMP(Mobile Measurement Partner)とは、アプリデータの計測・アトリビューションなどを行い、キャンペーンパフォーマンスに関する情報を提供する事業者です。
4.2 24時間のタイマーがスタート
アプリのインストールがおこなわれると、24時間のタイマーがスタートします。
この24時間の間に、ユーザーがアプリの登録や購入といったSKANのコンバージョン値を更新するような別のアクションをおこなうと、タイマーはリセット。再度24時間のタイマーがスタートします。
タイマーの目的は、インストールがおこなわれた時間の特定を難しくして、個々のユーザーとインストールなどのイベントの紐づけを行えないようにする事でプライバシーを保護する為です。
4.3 ポストバックが送信される
ポストバックとは、ユーザーの行動に関するデータを広告主に送り返す機能です。
SKANでは、アプリ上でコンバージョン値の更新が24時間おこなわれずにタイマーがゼロになると、ポストバックが送信されます。
このフィードバックデータを活用して、広告主はキャンペーンを最適化します。
SKANのポストバックデータにはデバイスやユーザーのデータは含まれません。
タイマーによる遅延と併せてユーザーを特定せずに、プライバシーを保護する仕組みです。
一方、IDFAアトリビューションでは、タイマーによるポストバックの遅延は生じません。
インストールのポストバックをMMPがリアルタイムで受信し、記録されたアプリのIDFAデータと照合します。
SKANの導入を検討している広告主やマーケティング担当者は、その課題についても理解しておく必要があります。ここでは2つの課題について解説します。
5.1 データ受信の遅延
1つ目の課題はデータ受信の遅延です。
SKANは、ユーザーのプライバシー保護のため、広告クリックからアプリインストール、コンバージョンイベントまでのデータを匿名で処理し、即時に提供するのではなく、一定の集計期間を経てまとめて送信されます。
この集計と報告のプロセスでは、リアルタイムでの広告効果の評価が難しいため、広告主はキャンペーンや予算の最適化を迅速におこなうことができない点が課題となります。
5.2 リエンゲージメントの計測ができない
2つ目の課題は、市場に流通しているSKAN4.0時点ではリエンゲージメントの計測ができない点です。
上述のようにSKANでは、デバイスやユーザーのデータが収集・共有されないという特徴があります。
それゆえ、コンバージョンの意図を示しているユーザーに対して広告を配信するリエンゲージメントの計測ができません。
ここでは、SKANの導入を支援する「jampp」をご紹介します。
「jampp」は、マイクロアドが専売パートナーとして提供しているアプリ特化マーケティングプラットフォームです。
「jampp」がグローバルで蓄積したSKANへの知見と経験を、マイクロアドが日本の広告市場にローカライズして導入をご支援。SKANをiOS評価のメインストリームとして活用いただけるように、積極的な導入支援をおこなっています。
「jampp」の特徴は、IDFAに依存しないアルゴリズムで様々なコンテキストデータを基に最適化する点です。上記技術を活用しJampp内の実績ではIDFA とSKAN比較で37%SKANCPIを抑えることができています。
SKAdNetwork領域以外でも、機械学習を活用しLTV最大化に貢献するリターゲティング機能も強みです。既存ユーザーの利用促進や休眠ユーザーの復帰、ロイヤリティの向上を促すことができます。
新規ユーザーの獲得からユーザーのリピーター化・ロイヤル化、アプリ内収益最大化まで一気通貫で支援が可能なプラットフォームです。
世界的なプライバシー保護意識の高まりと共に、IDFAやCookieに関する規制が強化されるようになりました。
これに対応する形で、AppleはATTというプライバシーフレームワークを導入し、Apple製品上でIDFAの利用にあたってユーザーの同意取得を義務付けるようになりました。
こうした流れを受けて、IDFAが取得できなくてもトラッキングをおこなえるフレームワーク「SKAdNetwork(SKAN)」が注目を集めています。
本記事では、SKAdNetworkの特徴・課題や注目されるようになった背景のほか、SKAdNetworkでトラッキングをおこなう仕組みについて解説しています。
記事の後半では、SKAdNetworkの導入を支援する支援するプラットフォーム「jampp」についても解説しました。
マイクロアドでは、マルチIDに対応するなどプライバシーに配慮した広告配信に注力しています。お悩みの広告主様やマーケティング担当者様は、ぜひご相談ください。