拡張コンバージョンとは？メリット・注意点や設定方法について解説

WebマーケティングやWeb広告の領域において、Cookieによるユーザー情報の取得はCV（コンバージョン）計測をおこなううえで欠かせないものです。

しかしながら、近年では個人情報保護の観点からCookieの規制が厳しくなっており、従来のCV計測が難しくなると懸念されています。

そこで、広告運用者がこれまで通りCV計測できるようにするための措置としてGoogleがリリースしたのが、「拡張コンバージョン」という仕組みです。

本記事では、拡張コンバージョンの概要・リリースされた背景・従来のCV計測との違いに加えて、導入メリットと設定方法について解説します。

CVの計測には、多くの場合Cookieが利用されています。

拡張コンバージョンとは、Cookieを使用できない場合でも、従来と同じ精度でCV計測をおこなえるようにGoogleがリリースした新機能です。

1.1 拡張コンバージョンの特徴

Cookieとは、ユーザーが入力したデータ・行動履歴などの情報を保存するための仕組みです。以下の2種類に分類されます。

• ・1st Party Cookie
• ・3rd Party Cookie

1st Party Cookieとは、ユーザーが訪問したWebサイトのドメインから直接発行されるCookieです。

対して、3rd Party Cookieは第三者のドメインから発行されるものを指します。

3rd Party Cookieを使用すると、複数のWebサイトを横断してブラウザの閲覧を追跡できます。

これにより、ユーザーの興味関心や行動に基づくパーソナライズされた広告を配信したり、広告の効果測定を行うことが可能です。

後に詳述しますが、近年、3rd Party Cookieの規制が進んでいる影響から、Cookieを使ったターゲティング広告の配信や効果測定が困難になっています。

拡張コンバージョンは、既存のCookieによるCV計測を補完する機能で、3rd Party Cookieを使用できない場合でも正確なCV計測をおこなえます。

拡張コンバージョンの特徴は、自社のWebサイトで取得したメールアドレス・氏名・住所・電話番号などのユーザーデータを「ハッシュ化」して Googleに送信する点です。

ハッシュ化とは、特定の計算手法に基づいて元のデータを不規則な文字列に置換する処理を指します。

ハッシュ化は暗号化と違って不可逆性があり、元に戻せない性質があります。そのため、ユーザーのプライバシーを保護しながらCV計測を行うことが可能です。

1.2 拡張コンバージョンの仕組み

拡張コンバージョンでは、ハッシュ化された送信データとGoogleアカウントを照らし合わせて正確なCVを計測します。

拡張コンバージョンによる計測補完のステップは、以下のとおりです。

画像引用元：拡張コンバージョンについて｜Google 広告ヘルプ

1. Googleアカウントにログインしたユーザーが広告を閲覧

2. 広告を見たユーザーがCVに至る

3. CVに至ったユーザーがサービス契約や商品購入のために入力したメールアドレスなどの情報を、ハッシュ化された形式でGoogleに送信

4. Googleが持つデータとハッシュ化されたデータの照合によってCVを計測

この仕組みが機能し、正確なCV計測ができるようになっています。

ただし、拡張コンバージョンを設定できるのは、上記の仕組みから登録・申込・購入などリード情報を送信できるCV行動に限定されます。

また、Googleアカウントの情報を計測に使用するため、GoogleにログインしていないユーザーのCVは計測できません。

従来、Web広告などのCV計測には主にCookieが利用されてきました。そんな中で、拡張コンバージョンの提供に至った背景についてみていきましょう。

2.1 個人情報保護のためのCookie規制

CookieはCV計測に加えて、ユーザーの行動履歴の保存や興味関心を基にしたターゲティングにも広く使用されています。

その一方で、ユーザーからは「自分の個人情報が第三者に意図しない形で収集される」という点がかねてから懸念されていました。

これを受けて、多くの国・地域で Cookie規制の動きが強まり、ブラウザ側でも利用制限が進められています。

AppleのSafariでは、すでに3rd Party Cookieをデフォルトでブロックしています。Googleも、Chromeでの3rd Party Cookieを2025年以降段階的に廃止する方針を発表しています。

2.2 広告のCV計測が困難に

Cookieの規制が進む一方で、今度は広告運用者側から「正確なCV計測ができなくなってしまう」という懸念が広がりました。

CV計測の精度が低下すると、企業はマーケティング施策の効果測定が難しくなるなど、多大な影響を受けかねません。

そこで、「1st Party Cookieであれば、Webサイトの当事者である企業自身がユーザーに許諾を取った状態で情報を取得するためプライバシーリスクも低い」という考えが浸透し、

次第に3rd Party Cookieだけではなく1st Party Cookieを利用する動きが広がりました。

しかしながら、1st Party CookieもSafariではITP制限というトラッキング防止機能で制限されるなど、Cookie自体の利用制限が進んでいます。

このような状況下で、CV計測の精度低下が懸念されるようになり、拡張コンバージョンがリリースされました。

従来のCV計測と拡張コンバージョンとでは、CVに至ったユーザーを特定するために必要とするデータが異なります。

従来のCookieによるCV計測では、広告がクリックされると、サイトに設置したタグによってCookieにユーザー情報（3rd Party Data）が書き込まれます。

Webサイト上でCVが発生した際に、コンバージョンタグに反応したユーザー情報を読み取ることにより、CVの計測がおこなわれる仕組みです。

しかしながら、Cookieが制限されるとユーザー情報をCookieに書き込めなくなるため、CVの計測が困難になります。

一方、拡張コンバージョンでは、ユーザーが広告をクリックするとハッシュ化された形式で個人情報がGoogleに送信されます。

Googleのサーバーは、この送信された個人情報（1st Party Data）と Googleアカウントの情報を照らし合わせて、CVがカウントされる仕組みです。

ここまで述べてきたように、拡張コンバージョンはCookie規制に対応するためにリリースされました。続いて、拡張コンバージョンの主なメリットについて解説します。

4.1 CV計測の精度を維持できる

拡張コンバージョンの導入で得られる重要なメリットは、Cookieを使用していたときのCV計測の精度を維持でき、従来どおり広告運用ができる点です。

また、拡張コンバージョンの仕組みにおいては、Webサイト外の店舗訪問や電話での問い合わせといったオフラインのアクションも測定できます。オフラインを含めた詳細なデータを活用することで、よりCV計測の精度が向上します。

4.2 機械学習の精度が向上する

Google広告の機械学習の精度が高まり、CV率などの向上につながる点もメリットです。

拡張コンバージョンの利用によって、蓄積された大量のデータを機械学習のアルゴリズムが学習し、より精密な予測やターゲティングをおこなえるようになります。

ユーザーの行動パターンや嗜好を細かく把握し、そのデータを基にパーソナライズされた広告配信などが可能です。

拡張コンバージョンの導入には、多くの導入メリットがある一方で、注意すべきポイントとして以下の3つが挙げられます。

• ・設定が複雑で工数がかかる
• ・Webサイトの改修が必要
• ・ユーザーの同意取得が必須

拡張コンバージョンは設定が複雑で手間がかかり、高度な技術力が求められます。

自社で対応が難しい場合は、広告代理店などへ外注する選択肢もありますが、コストがかかる点に留意しましょう。

また、問合せフォーム等のサイト改修が必要になるため、サイトの管理者に相談しながら導入を進めなければなりません。

加えて、拡張コンバージョンの性質上、1st Party DataをGoogleに送信するためユーザーの同意取得が必要です。

1st Party Dataの取り扱いについては、自社の法務部門で事前に調整しておきましょう。

拡張コンバージョンを設定する主な方法は、以下の3つです。

• ・Googleタグマネージャーで設定
• ・Googleタグを Web サイトに直接設置する
• ・Google Ads API を利用する（コーディング）

ここでは、最も代表的なGoogleタグマネージャーを使用して自動収集する方法を説明します。手順は以下のとおりです。

1. Google 広告のアカウントにログインし、管理画面の右上にある「ツールと設定」から「測定」、続いて「コンバージョン」をクリック

2. 左側メニューから「設定」、「拡張コンバージョン」の順に選択

3. 「拡張コンバージョンをオンにします」をチェックし、プルダウンメニューから「Google タグマネージャー」を選択

4. 顧客データに関する規約の同意画面が表示されたら「同意する」を選択

5. 概要ページに戻り、拡張コンバージョンで適用させるコンバージョンアクションを選択

6. 「設定を編集」を選択後、「このコンバージョンアクションに拡張コンバージョンを使用します」をチェック、保存して完了

GoogleタグをWebサイトに直接設置する方法では、タグマネージャーを使用せず手動で設定します。

Google Ads APIを利用するやり方は、自社のサーバーの状態によって導入方法が異なり、コーディングなどの知識や高度な技術が必要になります。

Cookie規制が進む昨今の広告運用においては、拡張コンバージョンなどの新たなソリューションの活用が不可欠です。

本章では、共通IDソリューションを活用したCookieレスでの広告配信が可能な「UNIVERSE Ads」についてご紹介します。

7.1 「UNIVERSE Ads」とは

「UNIVERSE Ads」は、マイクロアドが提供する国内最大規模の売上シェアを誇る広告配信プラットフォームです。

210社以上のデータプロバイダーと接続する「UNIVERSE」と連携しており、多種多様なマーケティングニーズに合わせたデータ分析および広告配信をおこなえるツールです。

「UNIVERSE Ads」では、ユーザーの同意を得て取得した情報をプライバシー保護に配慮した識別子に変換します。

その際に生成された固有IDを活用して、広告配信およびCV計測が可能です。

■共通IDソリューションの詳細はこちら

7.2 Cookieレスの環境下でCV計測が可能

「UNIVERSE Ads」は、Googleが提供する「Privacy Sandbox」にも対応しています。

Privacy Sandboxとは、ユーザーのプライバシー保護と広告による収益の両立を目指すための仕組みです。

拡張コンバージョン同様、3rd Party Cookieを使用せずにCV計測をおこなえます。

■Privacy Sandboxの詳細はこちら

従来は、広告効果を測定するうえでCookieによるユーザー情報の取得が不可欠でした。

しかしながら、個人情報保護の問題が取り沙汰されるようになり、Cookieの規制が世界規模で進んでいる状況です。

「拡張コンバージョン」は、広告運用者やWebマーケターにとって従来のCookie依存から脱却する問題解決の糸口になりうるツールです。また、活用の仕方次第では、CV精度の向上にもつながります。

本記事では、拡張コンバージョンの概要やリリースの背景に加えて、導入メリット・注意点と設定方法について解説しました。

記事の後半では、3rd Party Cookieに依存しない広告配信が可能なサービス「UNIVERSE Ads」についてご紹介しています。

Cookieレスに対応した広告配信をご検討している広告運用のご担当者は、ぜひ利用をご検討ください。