広告主はこれまで、3rd Party Cookieで取得した個人データを活用し、効率的なマーケティング活動をおこなってきました。
しかしながら、近年は個人情報保護の観点から3rd Party Cookie規制の動きが広がり、顧客リストの獲得やターゲティング精度の向上が難しくなっています。
その対策の一つとして挙げられるのが、Google広告のターゲティング機能である「カスタマーマッチ」です。カスタマーマッチの特徴は、Cookieに依存せず自社が保有する顧客データを活用してターゲティング精度の高い広告配信を行える点です。
本記事では、カスタマーマッチの概要・仕組みのほか、メリット・注意点、カスタマーマッチの設定方法や活用方法について解説します。
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カスタマーマッチとは、自社が保有するメールアドレスや電話番号から、顧客情報に基づいたユーザーリストの作成が可能なGoogle広告のターゲティング機能の一つです。
作成したリストをキャンペーンや広告グループに登録すると、Google検索やYoutubeなどを利用するユーザーへ広告配信をおこなえるようになります。
逆に、既存顧客への広告配信を避けたい場合は、リストから除外することも可能です。
カスタマーマッチの基本的な仕組みは、以下のとおりです。
上記個人データに該当するのは、以下の情報です。
マッチングをおこなうには、最低でも1,000件以上の個人データが必要です。マッチしたリストに基づいてターゲットを設定すると、以下の5つの手法で広告配信ができるようになります。
対象ユーザーが、Googleにログインした状態で配信面を閲覧した際に、これらの広告が表示される仕組みです。
カスタマーマッチが注目されている背景には、世界的な3rd Party Cookie規制の動きがあります。代表的なものとして挙げられるのが、iOSのアップデートによるITP(Intelligent Tracking Prevention)の機能強化です。
ITPとは、AppleがSafariに搭載しているトラッキング防止機能で、バージョンアップを繰り返しながら段階的に強化がおこなわれてきました。現在では、iOSにおいて3rd Party Cookieは完全にブロックされています。
こうした3rd Party Cookie規制は年々厳しくなってきており、リターゲティング広告の制限やCV計測の精度低下が懸念されている状況です。
そこで、3rd Party Cokieに依存せず、自社が保有する個人データを利用した広告配信をおこなえる「カスタマーマッチ」が注目されるようになってきました。
カスタマーマッチには、主に以下のような導入メリットがあります。
・顧客への再アプローチの効率化
・パーソナライズされた広告表示が可能
・マルチIDでの広告配信
・広告の費用対効果を高められる
カスタマーマッチの導入によって既存顧客や休眠顧客への効率的なアプローチが可能となり、リピート率向上が見込めます。
また、既存顧客の配信除外設定ができるため、会員登録や資料請求を目的としている場合など、新規顧客のみの広告配信設定ができる点もメリットです。
顧客の興味・関心に基づくパーソナライズされた広告表示によって、クリック率の向上も見込めます。無駄な広告表示が減り、ターゲットを絞ったアプローチができれば広告の費用対効果も高められるでしょう。
さらに、上述した3rd Party Cookie規制が進んでも、マルチIDで広告配信をおこなえるため影響を受けません。
カスタマーマッチを使用すること自体には直接的な費用はかかりませんが、、以下の2つを満たす必要があります。
そのうえで、さらに以下の条件を満たしているかどうかで利用できる機能が変わってきます。
ポリシーを遵守しているすべての広告主はモニタリング設定と除外設定を利用できます。
モニタリング設定とは、広告キャンペーンの効果を追跡し、分析するための設定です。
選択したプレースメント、トピック、またはオーディエンスでキャンペーン実施中の広告の配信結果を確認することができます。
除外設定では、特定のユーザーやオーディエンスを広告配信から除外することが可能です。
この機能を利用することで、既存顧客を除外し新規顧客のみにアプローチを行うなど、目的に合った効果的なターゲティングをおこなうことができます。
ただし、利用金額の条件を満たしていなければターゲティング設定と個別の入札単価調整はおこなえません。利用条件は今後アップデートされていく可能性があるので、随時Googleの公式サイトで最新情報を確認しましょう。
Google以外の媒体における似たような仕組みは、Yahoo!広告・Meta広告・Microsoft広告・X(Twitter)広告などにも存在します。
いずれも、保有する顧客データを活用し、広告を届けたいユーザーをリスト化したうえでリーチする点はカスタマーマッチと同じです。
異なる点としては「マッチ率の高さ」が挙げられます。
主要な媒体の中では、Google広告でのメールアドレスのマッチ率が50.4%で最も高く(※1)、Google利用者の多さを踏まえると、他媒体の類似手法に比べて効果が高いといえます。
※1)WorldStream by LOCALiQ How to Use Google Ads’ Customer Match: The Ultimate Guide
カスタマーマッチを活用できる広告は以下の5つです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
Google検索広告では、作成したリストのユーザーのアクションに応じて、キーワードの入札と入札単価の調整をおこなえます。
既存顧客と潜在顧客に対して、個別最適化された(パーソナライズド)広告配信が可能で、具体的には以下のような活用例があります。
・潜在顧客に資料請求や「無料お試し」などの広告を配信
・既存顧客に対するWebサイトへの誘導や、再購入を促す広告配信
潜在顧客・既存顧客双方へアプローチできるため、クリック率・CV率の向上が見込めます。
Googleショッピング広告でも、Google検索広告と同様のことがおこなえます。
Googleショッピング広告とは、Googleでキーワード検索するとページの最上部に表示される商品画像付きの広告です。
カスタマーマッチを使うと、既存顧客が特定のキーワードを検索した際の入札を強化できるため、より高額な商品や関連商品の購入促進につなげられます。
Googleディスプレイ広告とは、一般のWebサイトやアプリのほか、YouTube・GmailなどのGoogleプラットフォームの広告枠に表示される広告です。
カスタマーマッチを活用した既存顧客へのアプローチによって、認知の獲得を促進できます。例えば、既存顧客に対してセールを告知して購入を促す広告配信などが可能です。
ユーザーのインターネット上での検索行動に応じて最適な広告が表示されるファインド広告にも活用できます。
一つのキャンペーンでGoogleのサービスを利用する幅広いユーザーにリーチでき、ブランドやセールの認知獲得を効率的におこなえる点がメリットです。
マッチングによって連携したリストのユーザーと自社顧客の類似ユーザーに対して、YouTube視聴時に動画の前後や途中に流れるTrueView広告を配信可能です。
動画広告のメリットを活かし、自社プロダクトやサービスの強み・歴史などをテレビCMのように訴求できます。
価値の高い顧客への広告配信によって、新商品のブランド認知向上やCVの促進に効果的です。
カスタマーマッチの設定は、以下の3ステップでおこないます。
各ステップを詳しくみていきましょう。
まずは顧客データを用意します。Google広告では、下記の顧客データの使用が可能です。
モバイルデバイスIDを利用する際は、新規客か常連客かや過去に来店したことがあるかといったアプリ内でのユーザーの行動に関する情報を加味できます。
ユーザーIDを利用する際は、サイトタグに「user_id」のパラメータを追加すると、特定の顧客を識別可能です。
顧客リストを作成する前に、Googleのテンプレートなどを使用してこれらのデータを用意しましょう。
次に顧客リストを作成します。手順は以下のとおりです。
最後に「保存して次へ」をクリックすれば、顧客リストの作成・アップロードは完了です。
続いて、キャンペーン・広告グループへの紐づけをおこないます。オーディエンスセグメントへの追加手順は以下のとおりです。
除外する場合は以下の手順でおこないます。
以上ですべての設定は完了です。
カスタマーマッチを利用する際は、以下の点に注意しなければなりません。
□個人情報保護に十分配慮する
□リストが正しくアップロードできているかを確認する
□リストのサイズに注意する
□リストのマッチ率を確認する
□リストを定期的に更新する
それぞれの注意点について詳しくみていきましょう。
カスタマーマッチで利用する顧客データは個人情報です。したがって、その取り扱いは慎重におこなわければなりません。
カスタマーマッチは個人データの第三者提供に該当するため、本人同意を取得したデータ以外は利用不可です。
また、個人情報保護の観点から、以下の内容をプライバシーポリシーなどに記載する必要があります。
・電話番号やメールアドレスなどの個人情報が第三者に提供される点
・どこへ提供されるのかといった提供先の情報
さらに、Google広告の運営元であるGoogle社は海外法人のため、「外国にある第三者への提供」に該当する旨を、別途記載しましょう。
リストが正しく設定されていない場合、ファイルをアップロードした後にエラー表示が出ます。
その際は、リストのフォーマットが正しいかどうかの確認が必要です。
ファイルの形式が適正かどうか、電話番号には国コードを含めているかや、メールアドレスにドメイン名を含めているかなどを改めて確認しましょう。
カスタマーマッチによるマッチングには、1,000件以上のオーディエンスリストのサイズが推奨されています。
リストのサイズが小さすぎると安定的に広告が表示されず、配信ボリュームが十分に出ない恐れがある点に注意しましょう。
カスタマーマッチにおいて、アップロードしたリストのうちどれくらいのデータがGoogleユーザーと結びついたかを示す割合を「マッチ率」といいます。
マッチ率を確認することで、どれだけのリスト件数をアップロードすれば自社の目標水準をクリアできるかを逆算できます。マッチ率の確認手順は以下のとおりです。
過去にアップロードしたリストのマッチ率も確認できるので、過去のデータを適切な方法でアップロードできているかもチェックしましょう。
CV済みのユーザーに対して配信の除外設定をしている場合、リストを更新しなければCVしたユーザーがリストに残り続けることになります。
効率的なCV獲得のためにも、月に一度月初におこなうなどサイクルを決めて定期的にリストを更新しましょう。
マイクロアドが提供する広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」は、カスタマーマッチと同様にマルチIDでの広告配信が可能です。
「UNIVERSE Ads」を利用すれば、マーケティングのニーズに合わせたデータ分析や広告配信をおこなえるようになります。
「UNIVERSE Ads」では、Webサイト上で取得可能なデータとユーザーの同意を得て取得した情報を、プライバシー保護に配慮した識別子に変換します。その際に生成された固有IDを活用して、広告配信および精度の高いCV計測をおこなえるのが特徴です。
3rd Party Cookieはもとより、1st Party Cookieの保存期間制限も厳しいAppleのiOSユーザーにも対応しており、プライバシーに配慮したうえで広告配信できる点もメリットです。
配信先のメディアも多岐にわたり、インターネット広告のバナーや動画広告など多種多様なフォーマットに対応しています。
昨今のCookie規制により、これまでユーザーの同意を得ずにおこなっていた顧客リストの獲得や広告ターゲティングが制限されるようになりました。
そんな状況下における対策の一つとして注目されているのが、Google広告のターゲティング機能である「カスタマーマッチ」です。
カスタマーマッチは自社が保有する顧客データを活用するため、3rd Party Cookieに依存することなくターゲティング精度の高い広告配信をおこなえます。
個人情報保護への配慮など注意点を押さえつつ、マーケティングに上手く活用して広告効果を高めましょう。
本記事では、カスタマーマッチの概要と仕組みのほか、活用するうえでのメリット・注意点、設定方法や活用方法について解説しました。
記事の後半では、カスタマーマッチと同様にマルチIDでの広告配信が可能なサービス「UNIVERSE Ads」についてご紹介しています。広告運用のご担当者は、ぜひ利用をご検討ください。
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