昨今のプライバシー保護やCookieの使用に関する規制の強化により、従来のターゲティングやリターゲティング戦略をどのように維持・改善すべきかが問題となっています。
マーケティング担当者の中には、Cookieの代替手段を検討している方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、Cookie規制による影響と、規制に対応するための対策「共通IDソューション」について解説しています。
共通IDソリューションのアプローチには「確定ID」と「推定ID」の2種類があります。それぞれの特徴や代表的なサービスについても詳しく説明してますので、ぜひ最後までご覧ください。
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Cookie(クッキー)とは、Webサイトを閲覧する際にブラウザに一時的にデータが保存される仕組みです。
具体的には、訪問したWebサイトからユーザーのコンピューターやスマートフォンのブラウザに送られる小さなテキストファイルを指します。
「3rd party Cookie」とは、ユーザーが訪れたWebサイト自体ではなく、広告ネットワークや外部のサービス業者などのドメインが発行するCookieを指します。
3rd party Cookieを利用すると多数のWebサイトを跨いでユーザーの行動を追跡できるため、ユーザーの関心や行動に基づくパーソナライズされた広告の配信が可能です。
Cookie自体には個人を識別する情報は含まれていないものの、Web上での行動履歴を通じて個々の好みや購入傾向の詳細な把握が可能です。
そのため、これらの情報は個人情報と同等、あるいはそれ以上の価値を持つと見なされるケースがあります。
また、これらのデータは第三者に売買されるなどして外部に漏れるリスクもあります。
さらに、一度検索した商品やキーワードに関連した広告が過剰に表示され、追跡される場合もあります。こうしたプライバシーに関するリスクが注目され、ヨーロッパを中心にCookieの使用に関する規制が強化されている状況です。
昨今のプライバシー保護の観点から、Google社は3rd Party Cookieの廃止を発表しました。2024年1月~3月には3rd party Cookieの1%を無効化し、2024年第3四半期(7-9月期)以降、段階的に廃止される予定です(※1)。
また、既にApple社のWebブラウザ「Safari」では、2020年3月より3rd party Cookieが全面的にブロックされています(※2)。
※1)The Privacy Sandbox ウェブ向けのプライバシー サンドボックスのスケジュール
※2)WebKit Full Third-Party Cookie Blocking and More
3rd Party Cookieが使えなくなる規制を「Cookie規制」と呼びます。
現在、日本におけるWeb全体でのChrome利用率は約50%。世界全体では約63%を占めており、それだけ多くの人が2024年にはCookie規制の影響を受けることになります。
また、日本はモバイルのiOS利用者(Safari利用者)が約62%と高く、既に3rd party Cookieを使えないスマホ・タブレットユーザーがおよそ6割にのぼります(※3)。
実際、Cookie規制によって何が変わるのかをみていきましょう。
まず、ユーザーの履歴や傾向からターゲティングをおこなう技術に制約がかかります。
下記は、影響を受けると予測される技術の一部です。
そのほか、ユーザー(ブラウザ)を特定した広告配信が困難になるため、フリークエンシーキャップ(Web広告への接触頻度の制御)にも影響を与えます。
加えて、Cookie単位での表示回数のカウントができなくなるため、自社サイトに媒体タグを埋めることで把握していたCV数が計測不可となります。
規制への対応として、企業は新しい追跡方法や技術への移行を考えなければなりません。具体的には、ポストCookieに対応した計測ツールや代替するID技術の活用が挙げられます。
ただし、新しい方法に切り替えたとしても、得られるデータの断片化によって広告効果の分析がより複雑になると予想されています。
(※3)StatCounter Global Stats Browser Market Share Worldwide
「共通IDソリューション」とは、3rd Party Cookieに代わる新たなIDをユーザーに付与する手段です。
3rd party Cookieは、ユーザーがWebサイトを閲覧した履歴などの情報が中心です。
一方、「共通IDソリューション」はユーザーのデバイスやブラウザに対し一意の識別子を割り当て、この識別子は時間が経っても変わらないよう設計されています。
したがって、共通IDは持続的な特性を持っており、ユーザーの長期間にわたる動向や関心の把握が可能です。
共通IDソリューションは大きく「確定ID」「推定ID」の2種類に分けられます。
Cookie規制に適応するためには、「確定ID」と「推定ID」両方のデータを充実させることが重要です。
これらを組み合わせることで、Cookieに頼らずにユーザーのプライバシーを尊重しながら、高い精度と広範なリーチの両立が可能となります。
次章以降で、それぞれについて詳しく説明していきます。
確定IDとは、ユーザーの同意が得られたメールアドレスなどの情報を暗号化して生成される一意のIDです。
確定IDはCookieと同様、ユーザーを個として捉えられます。
確定IDは確定データを基に生成されるため、精度が非常に高いのが特徴です。
確定IDの利活用によって企業や広告主はユーザーの正確な興味や購買行動を把握でき、その情報に基づくパーソナライズされたマーケティング戦略を展開できます。これにより、CX(顧客体験)の向上が見込めます。
確定IDの課題として「ボリュームが少ない」点が挙げられます。
メールアドレスなどの情報の取得・利活用についてユーザーから同意を得る必要があるためです。
確定IDの代表的なサービスとして、LiveRamp社が提供する「RampID」が挙げられます。「RampID」はユーザーが自ら登録したメールアドレスや電話番号などの情報から生成されるため、ターゲティング広告などに利活用できます。
利用されるデータはユーザーが許可したうえで、安全性を高めるために暗号化されたものです。
また、「RampID」はハッシュ化処理されたメールアドレスをLiveRampがさらに非可逆に変換・暗号化して生成するため、元のメールアドレス情報には戻せない仕様になっています。
加えて、広告主や媒体社毎に異なるIDを生成しているため、LiveRampを通じてのみ、同一ユーザーであると識別することができます。
そのため、ターゲティングの精度およびセキュリティレベルを高く保ちながら、ユーザーのプライバシー保護を維持した広告配信が可能になります。
LiveRampは「RampID」をベースとした「LiveRamp Safe Haven」というデータコラボレーションプラットフォームを提供しています。
LiveRamp Safe Havenの活用によって企業は自社データ(1st party data)・インサイトの分析や、ほかの企業とのデータ共有が可能です。
これにより、広告配信だけでなく様々なデータの利活用が促進されます。
また、「RampID」を生成するための「ATS」モジュールは、ほかの確定IDソリューションとも連携できるため、一度導入すると複数のソリューションに対応できる便利なシステムです。
推定IDとは、Web上で得られるユーザーの行動やデバイスの種類などの情報から、似たような行動をするユーザーに特定のIDを割り振る手法です。
具体的には、ブラウザの種類・OS・使用デバイスなど、複数の情報を組み合わせて特定のユーザーを類推する目的でIDを生成します。
推定IDのメリットは、確定IDに比べより多くのボリュームを確保できる点です。
なぜなら、推定IDは特定のユーザーの確定情報ではなく、ブラウザの種類やオペレーティングシステム・訪問サイト・検索履歴などの一般的なデータを基に生成されるからです。
これらの情報は、インターネットを利用するすべてのユーザーから容易に収集可能なため、大量の推定IDを生成できます。
したがって、明確な個人識別データが得られない場合やユーザーがログインしていない時に有効な手段です。
推定IDの課題は、確定IDと比較すると精度が低い点です。完璧な精度で同一の端末を同じIDとして識別することは難しく、その点が課題とされています。
一方、広範囲でのターゲティング・セグメント分けやログインしていないユーザーの行動追跡などには、推定IDが適しています。
推定IDの代表的なサービスとして「IM-UID」が挙げられます。
「IM-UID」は、インティメート・マージャー社が提供している共通IDソリューションです。
「IM-UID」とは、Webブラウザから得られる情報を基に最も精度の高い情報を識別する仕組みです。
3rd party Cookieの使用が規制される中、「IM-UID」を活用することで異なるドメイン間でもデータの連携が可能です。
「IM-UID」では、Cookie以外の通常のインターネット接続で取得できる情報を活用しています。例として挙げると、IPアドレスやユーザーエージェントなどGoogle Analyticsなどでも取得している情報です。
この情報はCookieのように特定のブラウザを確定的に識別しないものです。
「IM-UID」はあくまで推定技術でありオプトアウトが可能なため、プライバシーは保護されます。
上記のプライバシー保護の観点からも、従来のCookieに変わる方法として注目を集めています。
Cookieではリーチが難しかったiOSユーザーへもリーチできる点が、「IM-UID」を導入する大きなメリットです。
上述のとおり、日本はモバイルユーザーの約6割がiOS利用者です。
しかしながら、現状Cookieを活用したターゲティングが可能なのはAndroid(Chrome) ユーザーのみとなっています。
「IM-UID」の活用によってiOS利用者にもターゲティングできるため、理論上は従来の約3倍のリーチ数が見込めます。
「UNIVERS Ads」は、Cookieに依存せずに広告を配信できる国内最大規模の売上シェアを誇るプラットフォームです。3rd Party Cookieの情報を必要とせず、プライバシーに配慮した広告配信が可能です。
また、JICDAQの第三者検証を経ており、ブランド毀損などのリスクを極力抑えたうえで広告配信をおこないます。
「UNIVERSE Ads」の主な特徴は、確定IDと推定IDの両方を組み合わせた技術を使用している点です。
顧客のマーケティングニーズに応じて、ターゲティングの精度と広告のリーチを同時に高められます。
日本国内のiPhoneのシェアが6割近くにのぼり、特に若年層ほどその傾向が顕著なため、iOSユーザーへのリーチは重要です。「UNIVERSE Ads」は推定ID「IM-UID」を活用した特定のカテゴリーに興味を持つユーザーのターゲティングに対応しており、iOSユーザーにもリーチが可能です。
iOSユーザー向けにIM-UIDを用いたリターゲティング広告をおこなった結果、AndroidユーザーにCookieを使った広告と比べてCPAが約50%低下した事例もあります。このように、iOSユーザーにリーチできるメリットは大きいといえます。
本記事では、Cookie規制による影響やCookie規制に対応するための対策「共通IDソリューション」を説明しました。
本記事で解説した内容をまとめると以下のとおりです。
・各企業ではCookie規制への対策を講じる必要がある
・Cookie規制への対応には「共通IDソリューション」が適している
・「確定ID」と「推定ID」のデータをバランスよく収集することが重要
記事の後半では「共通IDソリューション」を活用した広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」をご紹介しました。
「UNIVERSE Ads」は、プライバシーに配慮した共通IDソリューション「RampID」や「IM-UID」を活用した広告配信が可能です。
Cookie規制に対応した広告配信をおこないたい方は、ぜひUNIVERSE Ads」の導入をご検討ください。